最高裁の「検閲」

ソース(日刊ゲンダイ2012/2/24)掲載記事

最高裁 今度は憲法違反の「検閲」疑惑
(日刊ゲンダイ2012/2/24)

"誤報防止目的"で事前チェック

小沢裁判では、司法権力のデタラメが次々と明らかになっている。もはや検察が正義の味方とは誰も思っちゃいないだろうが、裁判所も叩けばいくらでも疑惑が出てくる。なかでも見過ごせないのが、憲法違反の「検閲疑惑」だ。

問題となっているのは、最高裁判所の「調達・公募情報」。これをめくると、最高裁事務総局は08年4月1日付で時事通信社共同通信社随意契約を交わしていることがわかる。
時事通信社との契約額は844万2000円。随意契約の理由として、「全国の裁判所の判決についての関連取材、人事異動等の発表報道に備えて情報収集、事前情報の誤りの指摘、誤報の防止等を目的に利用する」と書かれている。これって事前検閲にならないか。
通信社が誤報し、それを新聞社が載せたとしても、それは報じる側の問題であって、誤報防止のための事前チェックなんて聞いたことがない。
共同通信社との契約内容は、さらにロコツだ。「各新聞社の新聞記事となる直前の情報が配信され、不適切な箇所があれば、指摘及び変更が依頼できる」と明記されているのだ。ちなみに共同通信とは1152万9000円で契約している。

元外交官で評論家の天木直人氏は、驚きを隠さずこう言う。
「新聞社、特に地方紙は通信社の配信記事を元に作られることが多い。裁判所が事前に新聞記事を検閲しているとすれば、大問題です。当局に都合の悪い情報を事前にモミ消すことができるし、情報操作を行うこともできる。一種の情報統制です。税金を使って、メディアを統制している。こんなことが許されていいはずがありません」

日本国憲法は「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」(第21条2項)と定めている。
裁判所が憲法違反ではシャレにならないが、最高裁の見解によれば、検閲とは「行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるもの」(最高裁判所86年6月11日大法廷判決)を指すとされている。